人生100年時代のリハ課題とは
4月27日、自由民主党 厚生労働部会第6回リハビリテーションに関する小委員会(委員長:小川克巳)が開催されました。今回は、中間取りまとめに向けて、懸案であった訪問リハビリテーションについて安倍浩之氏(NPO法人全国在宅リハビリテーションを考える会 理事長)さらに総括的なまとめの意味を含めて吉田俊之氏(株式会社NTTデータ経営研究所)からリハビリテーションの課題についてご発表いただきました。
安倍氏からは「訪問リハビリテーションの課題と展望について」をテーマに、現在行われている訪問リハビリ・訪問看護リハビリの提供の現状と合わせて以下のような課題についてお話いただきました。
【 課題Ⅰ】
①訪問リハビリは国民にとって手続きが煩雑で、経済的、物理的に負担が大きいサービスであること②訪問看護リハビリは、国民にとって制度上の位置づけが分かりにくく、不安定なサービスであること③報酬改定の度に訪問看護リハビリに対する批判的な意見が多く出されるが、これは制度的位置づけが不安定であることによる。
【 課題Ⅱ 】
訪問リハビリテーションにおける予防的リハビリテーションは介護給付抑制に効果を上げているが、軽症者の訪問看護リハビリが打ち切りの方向であることに対して、その受け皿が十分でないことから多くの国民の介護度増悪の可能性が危惧される。
【 課題Ⅲ 】
看護師に対する理学療法士等の割合が多い訪問看護ステーションは、重度者対応・医療的ケア・夜間や24時間の対応をほとんど行っていないとの見解から、看護体制強化加算の要件について訪問看護ステーションに関わる人員配置用件の見直し(理学療法士等4割規制)がなされた。(2021年介護報酬改定)
安倍氏からは、社会保障費が十分に確保できない未来にあって地域包括ケアシステムを支える訪問リハビリテーションの安定供給を実現するためにも、国民が必要とするときに、必要なサービスを、必要なだけ提供できる体制(例えば、仮称・地域包括ケアステーション)を整備する必要があることをご提案いただきました。
吉田俊之氏からは「人生100年時代と理学療法士の可能性について」をテーマに、ウェルビーイングという新たな価値観の広まりと合わせて、介護や医療を受ける側の人に加え、日常のケアを提供する側の幸せや自分らしさも尊重される地域づくり、そして、サービス提供体制の構築が求められているとお話がありました。
またもう一つの着眼点として、被保険者の多数を占める「介護サービスを利用していない被保険者」の意向やニーズに一層耳を傾ける必要があることや、介護者の4人に1人は、介護のある生活と自分らしい生活との折り合いに苦労し悩んでいる可能性があるとのことでした。
吉田氏からは「人生100年時代」に向けて、
Ⅰ. 理学療法士等の専門職が介護者のポジティブな感情をエンパワーするという新たなアプローチは、地域包括ケアの実現を強力に推し進める起爆剤となる可能性がある
Ⅱ. 介護者等の孤立や孤独感という社会課題の解決に向けた重要な糸口として、①介護者向けの固有のサービス創出に関する政策研究の必要性、②理学療法士を中心とした新たなサービス種別や拠点創設に関する政策研究の必要性等をお話しいただきました。
参加していただいた皆さまからの質疑応答の後、これまでの議論を基に以下の項目について中間取りまとめ案をお伝えしました。その内容については後日、改めてお知らせしたいと考えています。
今年2月からこれまで6回のリハビリテーションに関する小委員会を開催し、それぞれ有識者の皆さまからご提示いただいた内容を参考にし、理学療法士等のリハビリテーション専門職が、その専門性をもっとのびのびと発揮できる環境を作り上げていきたいと思います。そのことがきっと多くの国民の幸福に資することになると信じます。