「経済財政運営と改革の基本方針2022」(骨太の方針)の決定を受けて

 6月7日(火)、「経済財政運営と改革の基本方針2022」、いわゆる「骨太の方針」が閣議決定されました。岸田内閣になって初めてまとめたもので、総理の経済政策「新しい資本主義」の具体策を反映する内容となっています。

 今回の骨太決定までの議論における私の取り組みの成果は主に下記の2点です。

(1)公的価格の費用の見える化に関する記載において「賃金の引き上げ」や「処遇改善」を注記から本文へ格上げ

(2)原案になかった「リハビリテーション」の文言を追記

 以下に、具体的な取り組みについてご報告いたします。


(1)「賃金の引き上げ」や「処遇改善」を注記から本文へ格上げした点について

 今回の骨太の方針の原案においては、「第4章 中長期の経済財政運営」「2.持続可能な社会保障制度の構築」「(全世代型社会保障の構築)」の項目に「公的価格の費用の見える化に取り組む。」とのみ記載され、「職種毎に仕事の内容に比して適正な水準まで賃金が引き上がり、必要な人材が確保されること等を目指して、現場で働く方々の更なる処遇改善に取り組んでいく」との記載は注記に留まっていました。

 これに対し、私からは、過去の厚生労働委員会での総理答弁を踏まえ、注記ではなく本文に記載すべきことを指摘いたしました。

 その委員会とは、私が総理質疑の機会をいただいた5月12日の参議院厚生労働委員会です。私が理学療法士等の給与水準が17年間変わっていないことに触れ、まずは自分たちの衣食住への不安を抱えずに過ごせることが必要であると訴え、総理より「職種ごとに適正な水準まで処遇を改善していけるよう検討を続けて参りたい」と答弁をいただきました。

 このような経緯もあり、私からの要望が認められ、最終決定において、上記文言が本文に盛り込まれることとなりました。


(2)「リハビリテーション」の文言を追記

 同じ章内にある「(社会保障分野における経済・財政一体改革の強化・推進)」の項目においては、「早期発見・早期治療のため、疾患に関する正しい知識の周知啓発を実施し、感染拡大によるがん健診受診の実態を踏まえ、引き続き、受診勧奨に取り組むとともに、政策効果に関する実証事業を着実に実施するなどリハビリテーションを含め予防・重症化予防・健康づくりを推進する」との記載が入りました。

 原案の段階では「リハビリテーション」の文言はなく、「予防・重症化予防・健康づくりを推進する」というシンプルな記載のみでした。

 これに対し、今年2月に厚労部会内に新設された「リハビリテーションに関する小委員会」の提言として、理学療法士等の関与体制の整備を盛り込むよう求め、厚生労働部会一丸となって取り組みを続けてきました。

 結果、理学療法士等の関与体制に関わる具体的な記載を盛り込むまでには至りませんでしたが、上記のとおり「リハビリテーション」という文言が追記されました。


◆ これまでの取り組みを振り返って

 6年前、私が国会議員になった頃は、医療分野の課題が議論される国政の場面で「リハビリテーション」「理学療法士」「作業療法士」「言語聴覚士」の用語が語られることほぼ皆無でした。まずは議論の俎上に載せる、そこからのスタートでした。

 この6年間、厚生労働部会等での発言で党内に課題を共有し、委員会での質問で政府に対し繰り返し課題を投げかけ、リハビリテーションを考える議員連盟で仲間を増やしながら、少しずつ、リハビリテーションという概念や、理学療法士等専門職の必要性・重要性・可能性への理解を広げていきました。

 今年2月には、悲願ともいうべき「リハビリテーションに関する小委員会」が党厚生労働部会内に設置され、歴史上初めて、政権与党たる自民党内で理学療法士等の課題を正面から議論する舞台が実現しました。私は委員長として、「提言をまとめ骨太の方針に載せる」ことを目標に掲げ、必死に取り組んで参りました。

 4月22日の参議院本会議では代表質問に立ち、岸田総理に対し、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士という医療専門職を御存じかお尋ねしたところ、総理より、理学療法士などのリハビリテーション専門職が重要な役割を果たしている旨の答弁をいただきました。総理から「理学療法士」の言葉が発せられたことに対し、多くの仲間から感動の声が寄せられました。

 続く5月12日の参議院厚生労働委員会でも総理より「職種ごとに適正な水準まで処遇を改善していけるよう検討を続けて参りたい」と答弁をいただいたことは上述のとおりです。

 様々な取り組みを重ね、少しずつ土壌を耕しながら、今回、骨太の方針に関し小委員会として提言をまとめました。提言提出後も、ぎりぎりまで関係各所と折衝を重ねて参りました。

 結果、要望通りの記載の実現に至らなかった点は大変悔しい思いですが、理学療法士等の賃金引上げや処遇改善を骨太の本文に記載させたこと、「リハビリテーション」という用語が盛り込まれたこと、これらの意義は大きく、この挑戦は、未来に向けた第一歩であると考えています。

 過去10年間の骨太の方針を見ても、2017年に「介護保険制度等」の項目で「生活機能障害リハビリの開発・普及」の記載がある(これも私が議員になってからです)以外に、リハビリテーションに関する文言が記載されたことはありません。理学療法士等の処遇改善に直接関わる記載が本文に盛り込まれたこともおそらくなかったのではないかと思います。

 まずは多くの方に「リハビリテーション」という概念への正しい認識をもっていただくこと、また、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士がそれぞれ専門性を有し独自の守備範囲を持っていることを理解していただくことが必要です。その上で、各専門職のニーズや可能性、それらを実現するための体制作り等について、引き続き取り組んで参りたいと思います。

 そのためには、ようやく灯されたこの光を絶やすことなく、国政の場に議論の舞台が継続して存在することが絶対に必要です。リハビリテーション専門職の声を代弁する職域代表議員が政権与党に存在し続けることの意味を今一度ご理解いただき、今後も変わらぬご支援をいただけますようお願い申し上げます。

経済財政運営と改革の基本方針2022はこちらから→

https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/2022/2022_basicpolicies_ja.pdf

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